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オフセット枚葉印刷機の進化

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枚葉オフセット印刷機は2000年頃から急激に進化した。これはCTPの普及とCIP4(JDF)よるところが大きい。
前工程がデジタル化したため、印刷する画像データや生産工程のメタデータが活用できるようになったからだ。

1994年に製販、印刷、後加工などのメーカー15社が参加してCIP3(Cooperation for Integration of Press,Prepress and Postpress)というコンソーシアムがスタートした。
プリプレスで設定した各種パラメーターを、標準化されたファイルフォーマットであるPPF(Print Production Format)で印刷、後加工に送り、共有データベースとして活用しようという試みだ。
まず最初に実用化されたのが、インキキーコントロールである。
RIPの画像データから粗画像をPPFに出力する。このPPFを受け取った印刷機側では、その印刷機のインキキーの幅で画像面積を積分し、インキキーデータに変換する。
こうして得られたインキキーデータに基づいてインキキーのプリセットが可能となった。
CIP3はその後ProcessesのPを一つ加えてCIP4となり、現在では300社以上の印刷関連メーカー・ベンダーが参加している。
CIP4で大きく変わったのがPPFからJDF(Job Definition Format)への変更である。PPFがPSという印刷業界専門の言語で書かれていたのに対し、JDFはXMLという汎用言語で書かれている。
これによって、印刷JOBそのもののデータだけではなく、生産工程全体のメタデータも扱えるようになり、より一層、印刷工程の管理ができるようになった。

一方で、1995年のDRUPAで各社のCTPが発表され、国内では1996年にフォトポリマータイプのCTP、1998年にはサーマルタイプのCTPが登場した。
CTPのおかげで、印刷時の見当合わせや網点の再現性、刷版の再現性などが飛躍的に向上した。
PostScriptという印刷業界独特の世界から、OpenTypeFontやPDF/X-1a、PDF/X4などの登場で、非常にオープンな環境になった。
そのためにRIPでのエラーがほぼ解消し、CTPは爆発的に普及した。国内のCTP化率は、今や98%を超えている。

2016年のDRUPAでハイデルベルグはオフセット枚葉印刷機の完全自動運転を実演した。オペレータは機械のスタートスイッチを押すだけ。
管理システムから受け取ったメタデータとRIPから受け取った画像データを使って、紙サイズプリセット、紙厚プリセット、インキキープリセットを行う。
刷り出しをカメラで読み込み、各色濃度、Lab値を元にOKシートを自動判定し本刷りに移行、規定枚数を刷了したら、機械停止し、次のJOBへの切り替えを行う。この間、すべて無人である。
オペレーターの仕事は印刷機を常にベストの状態に保つメンテナンスに比重が置かれるようになる。
実際には刷り出しの官能評価も必要であるし、フィーダーストップや機械のチョコ停、メタデータ入力後の変更などもあり、印刷工場の無人化はまだ先の話であろう。
ただ、オペレーターのスキルレス化、作業環境の改善、納期短縮、コスト低減には十分効果を発揮している。

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