色・インキ

LED UVインキ

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しばらく紙の話が続いたので、今度はインキの話。
一般の方は「インクジェット」のように「インク」というが、印刷会社の人間は「インキ」という。
また、色についてもCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対して、古い印刷人は墨(スミ)、藍(アイ)、紅(ベニ)、黄(キ)と呼ぶ。
この順番にも意味があり、オフセット印刷機で印刷する順番が K→C→M→Yなのである。
これは一般的な画像の画像面積率が少ない順に印刷するからである。
紙の上にインキはのりやすいが、インキの上にインキはのりにくい。インキの上では70%程度となってしまう。そこで、なるべく画像面積率の少ない色から刷っていくのである。
最後にYを印刷することによって、画像全体のテリを出す効果もある。

ここでは、当社で採用しているLED UVインキを紹介しよう。
従来はオフセット印刷では油性インキが使われてきた。今でも油性インキのほうがUVインキよりも多い。
しかし、油性インキは酸化重合と浸透で乾燥するため乾燥時間が必要で、通常は印刷した翌日に次の工程に入る。
UVインキは印刷機の最終胴直後に設置されたUVランプの照射で、即時に硬化する。

UVインキは顔料、モノマー、オリゴマー、光開始剤、助剤でできており、UV光が光開始剤に当たることにより、UV光のエネルギーを吸収し、モノマーが架橋してより高いエネルギーを持つポリマー(重合体)に化学変化する。
液体であるモノマー、オリゴマーが固体のポリマーに変化するわけだ。従って乾燥というよりは硬化といったほうが正しい。

 油性インキUVインキLED UVインキ
乾燥1日瞬間瞬間
パウダー裏付き防止に必要不要不要
UVランプ不要水銀2灯+メタハラ2灯LED1灯
光沢高光沢低光沢中光沢

UVインキのメリットは、油性インキのように裏付き(先刷りのインキが後刷り裏面にとられる)やブロッキング(刷本同士がインキでくっついてしまう)などのトラブルがなくなること。
裏付き防止のためのパウダーが不要となり、パウダーとインキが固まって紙面にピンホールなどを発生させないこと。
余ったパウダーが工場内に飛散しないため、工場内がきれいに保たれること。
様々なトラブルが減るために、オペレーターが本来の印刷業務に専念できること。
印刷機から出てきたときにはもう乾いているため、印刷終了後、すぐに次の工程に進めること。
油性インキの乾燥に伴うドライダウン(印刷直後と乾燥後で濃度が下がる)がなくなること。
インキ表面の被膜面強度が強い。
など、非常に多い。

一方のデメリットはインキの値段が高い。
ゆっくり乾燥せず、瞬時に硬化するため、インキ表面のレベリングが追い付かず、インキ表面光沢が少なくなる。
などである。
チャート印刷においては、ドライダウンがなくなることは非常に大きなメリットで、刷了後の濃度が保たれるのは有難い。
光沢性についても、インキメーカーとの協力で、ほとんど油性インキと変わらないレベルまで改善された。
また、被膜面強度が強いため、ADFで何度も通すチャートの場合、劣化するスピードが遅くなった。

従来のUVインキは水銀ランプ2灯+メタルハライドランプ2灯で硬化させていたが、LED UVインキではLEDランプ1灯で硬化できる。
有害な水銀を使わないこと、使用エネルギー量が大幅に下がること、で今後のUVはLED UVが主流になっていく。
LED UVの発売当初は色域が狭く、二次色の再現も悪かったが、現在では油性インキと見分けがつかないまでに改善された。

顔料について

印刷インキの顔料は主に次の有機化合物(カーボンブラックは無機)が使われる

Kカーボンブラック
Cフタロシアニンブルー
Mカーミン6B
Yジスアゾイエロー

ここで注意を要するのは耐光性であろう。
特にYに使われているカーミン6Bには窒素原子のアゾ基(-N=N-)部分があり、UV光に長時間さらされると、その部分の結合が切れてしまい、黄色の色見がなくなってしまう。
色によってY<M<C<Kの順で弱くなる。
屋外に貼るポスターなどではYとMについては耐光インキまたは超耐光インキを使う必要がある。(超耐光インキは最も強いが、色見が浅いので注意)

助剤について

インキに助剤を入れるのは、主にタック値とフロー値をコントロールするためである。
タック:インキの粘り気
フロー:均一な膜に広がろうとする流動性

助剤名役割
レジューサーインキを柔らかくする、フローを上げタックを下げる
コンパウンドインキの腰を切る、フローを変えずにタックを下げる
ワニスタックを変えずにフローを上げる
硬化剤タック、フローを変えずに硬化を促進させる
滑り剤耐摩擦性を向上させる
アンカー剤原反とインキの密着性を上げる
紙剥け防止剤紙剥けが起こるのを防止する
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